倭の五王は誰なのか?に関する本
干支一運60年の天皇紀: 藤原不比等の歴史改作システムを解く
- 作者:順治, 林
- 発売日: 2018/04/25
- メディア: 単行本
感想
冒頭でいきなり倭の五王と倭武の関係についてさらりと触れられていて、筆者の本を初めて読む者にとっては、スムーズに読み進めることができず、読んでは戻るを繰返しながら読み進めました。
歴代天皇については、実在が疑われる天皇がいたり、初代は応神とする説があったり、倭の五王に関するさまざまな説があり、それぞれなるほどなあと読んでいました。古代史は推理の要素が多く、そこが面白いのですが、反面、著者の出身地などからくる思い入れに影響されているのではないかと思われる部分もあり、古代史というよりは、ミステリー小説を読むような感覚で楽しむことが多かったです。
しかし、本書はタイトルにもあるように、干支一運による歴史改作のシステムについて書かれていて、謎解きというよりは、システム解析をしている。
たしかに、中国に対して、日本が長い歴史のある立派な国であると示すために、天皇の在位期間を適当に延ばしたり、実在しない天皇を適当に書き足したりするのは、あまりにも牧歌的で、日本書紀の作者をなめすぎていると思う。
そして、朝鮮半島の歴史と日本の歴史を並列に扱い、干支に注目しながら倭の五王が誰なのか解明しています。
歴史を作った(記述した)人の視点で、何を隠したかったのか、嘘は書かないようにどうごまかしたのか、など、日本書紀編纂の基本的な考え方が見えてくる本です。
何点としては、事例を示しながらとても詳しく書かれているので、ある程度古代史の知識があり、登場人物やさまざまな説を知っていないと、全体感をつかむのが難しいことです。1回読んだだけでは、三割程度の理解しかできませんでした。
筆者の他の本や、紹介されている井原教弼氏や石渡信一郎氏の本も読み、さらに理解を深めたいと思いました。